わたしをくるむもの

「と、父ちゃん！！」
「タカシ！！なんでお前がここにいるんだ」
「それはこっちのセリフだよ。仕事はどうしたの。今は会社に行っている時間だろ」
「辞めた」
「辞めたって、なんで」
「もう疲れたんだ。朝から晩まで働く事に」
「それじゃ、誰が家にお金を入れるんだよ。俺、来年は受験なんだぜ」
「俺の心配よりもお金が大事か。そうだよな。お前は昔からそう言う奴だった」
「当たり前だろ。お金が無かったら生活が出来ないんだから」
「それじゃ、聞くが、お前は父さんとお金、どっちが大事だ」
「そんなの選べるわけないだろ」
「・・・そうか。でも、母さんはお金を選んだよ。お金を稼げないあなたに価値は無いわ。この家から出て行ってって」
「母さんがそんな事を、信じられない」
「無理に信じる必要はないさ。世の中には知らない方が幸せな事もある」
「もう一度、母さんとやり直す気はないの」
「もう、二人で決めた事だ、悪いな」