赤い月の下で

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「隣の墓の方がいい。最近のもので新鮮だ」
 真夜中、男は墓穴を見下ろし声をかける。
 そこでは1匹の食人鬼が、手首に噛りついていた。
「肉付きが無駄にある。どうしてこれで子犬のような声だったのか不思議な女性だったよ。
 さて、3番街酒場の店主の墓を荒らしたのも君かね?」
 男の話をよそに鬼は、次は足にむかって口を付けていた。
「つけのたまった客に返り討ちにあってね。まあ、可哀想ではあったよ。もう少し寛容さがあればよかった。調子を合わせてグラスを注いだのは自分だったのだからな。
 で、味はどうだった? 散弾の食い込みがすごかったようだが?」
 突然だった。
 鬼は喰らいついていた肉から手を離し墓穴より飛び出る。
 そして男を一瞥すると、風のように暗闇に消えていった。
『オレにだって、食事のツレに好き嫌いはある』
 銅鐘を鳴らしたような低い声が暗闇に響く。
『ヒトを食ったような奴は嫌いだ』
ホラー
公開:19/11/12 16:38

ルイス足永( 関東 ケヤキの葉の上 )

ルイス足永(アシナガ)と申します。
普段はニコニコ静画に画像付きの作品を転がしています。
こちらにも載せれそうな作品の投稿をしたいと思います。
twitter:https://twitter.com/otoshibumi57
ニコニコ静画:http://seiga.nicovideo.jp/clip/2497487

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