灯りのソムリエ

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「いい灯りですね。」

「そうでしょうか?」

他の人の灯りと比べて自分のは、光も細くて弱く随分と凡庸だといつもコンプレックスで。
だからいいと言われてもディスられてるのかと一瞬。

「えぇとても良い灯りです。」

にこにこと目を細めて言われてちょっと嬉しくなる。
近所のおじさんだったかな?
どこかで逢ったことがある気がするようなないような。

「でももう少し・・せめて強い灯りだったらいいなと思うんです。」

「いいえそんなことありませんよ?
 あんまり強くては近寄りがたいじゃありませんか。」

ありがとうと。
口を動かそうとした刹那に一陣の風。
風から灯りを守る手が一瞬遅れた。

「あっ!」

私の弱い灯りではひとたまりもない。

「今にも消えそうでいい灯りでしたよ本当に。」

ほくほくとおじさんが私の魂を刈り取る。
死神がそんな穏やかな顔をしてるなんて聞いてない。
あぁ恨めしや。
ファンタジー
公開:19/11/12 16:18

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