火災現場2

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間抜けな犯人だった。
トイレで人を殺し、灯油を撒いて火をつけた。
燃えてしまえば証拠は何も残らないと思ったのだろう。
だがスプリンクラーが作動し、思った以上に早く火元は消し止められた。
警察はすぐに死体に気づき、死亡推定時刻から犯人を特定した。なんとも短絡的な犯行だった。
俺じゃない!
犯人は狂ったように否定していたが、他にアリバイのない人物はいないのだから仕方ない。
私は避難する時に放送室に忘れたスマホを取りに戻った。
微笑んだ。
スマホの中に予め入れておいた自分の音声を消せばこれで計画は完成だ。
「火災がトイレで発生しました。ただちに避難して下さい。繰り返します。ただちに避難——」
この音声こそが、犯行時に私は放送室にいたというアリバイを作ってくれる。
「ねえ警備員のおじさん、どうして火元がトイレだって知ってたの?」
振り返ると、一人の若い女刑事が立っていた。
手からスマホが落ちた。
ミステリー・推理
公開:19/11/11 06:14

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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