火災現場

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ドアを開けると煙が漂っていた。
火災ベルも鳴り響いている。
慌てて沖野は部屋に引き返した。逃げるなら大事な書類を持っていかなくては。
「命を最優先に!」
腕を掴まれ、振り返ると警備員がいた。沖野はムッとしたが、警備員の目には有無を言わせぬ凄味があった。
死んだら元も子もないな。
沖野は思い直してそのまま駆け足で玄関を目指したが、警備員は逆方向へと消えていった。
勇敢な男だ。あれは人の死を何度も見てきた目だ。

消防車が来ると程なくぼや騒ぎは治まった。
原因は放火だったが、奇妙なことに燃焼物の少ない避難階段が火元だった。
ただの嫌がらせか?
ホッとした沖野は、とりあえずさっきの警備員を捜すことにした。何となく彼にお礼を言っておきたかったのだ。
だが、男の姿はどこにも無かった。
代わりに書類が消えていた。
沖野はゾッとした。
もしあの時逃げなかったら、俺は本当に殺されていたかもしれない……
ミステリー・推理
公開:19/11/11 05:36

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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