2
6
陰暦は紅葉月の末の頃、仕事で寄った旅館の庭に、小さな枝垂れの紅葉があった。丈は大人の膝ばかり。青々茂る木々に混じり、一つ先行く紅は、まるで小僧の威張り顔。亭主に水を向けると、へえ、うちのちびの悪戯でと、妙な答えが返ってくる。
坊やが枝でも折って苛めたのかい?問い返せば、ちょいと頭(ず)に乗ってるんでさぁ、指さした先に件の紅葉が、風もないのにぱたりぱたり。紅い葉と思ったものが、よくよく見れば無数に生えた赤子の手。すわ怪談かと蒼くなったが、亭主はにやり笑い、やいちびども、大概にしねぇと、稲荷の具に混ぜっちまうぞと胴間声。途端に紅葉の幹からふさふさの尻尾が二本三本四本、、、
とんだ子沢山だ。名物の稲荷の折詰でつつくと、釣り上がった糸目の亭主は、そりゃもう日の本にゃ、三万四万のおやしろがありますんでと、こっちの方は天狗顔。うちはもっと多いがね、信楽の太鼓腹をぺしんと叩き、宿代に酒瓶置いて後にした。
坊やが枝でも折って苛めたのかい?問い返せば、ちょいと頭(ず)に乗ってるんでさぁ、指さした先に件の紅葉が、風もないのにぱたりぱたり。紅い葉と思ったものが、よくよく見れば無数に生えた赤子の手。すわ怪談かと蒼くなったが、亭主はにやり笑い、やいちびども、大概にしねぇと、稲荷の具に混ぜっちまうぞと胴間声。途端に紅葉の幹からふさふさの尻尾が二本三本四本、、、
とんだ子沢山だ。名物の稲荷の折詰でつつくと、釣り上がった糸目の亭主は、そりゃもう日の本にゃ、三万四万のおやしろがありますんでと、こっちの方は天狗顔。うちはもっと多いがね、信楽の太鼓腹をぺしんと叩き、宿代に酒瓶置いて後にした。
ミステリー・推理
公開:19/11/11 15:30
紅葉月:旧暦九月の異称
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
ログインするとコメントを投稿できます