ふしめ坂

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あの坂をのぼれば、海が見える――昔、国語の教科書で読んだフレーズを、ひとり口ずさみながら朝から歩き続けている。
人生の節目になぞらえて「ふしめ坂」と呼ばれるこの坂をのぼりきれば願い事がかなうと聞いてやってきた。
栃木県は奥日光にあるいろは坂や、神奈川県は箱根にある七曲がりのような急カーブが何度も続いたが、ふしめ坂の先は一向に見えない。
ただ、道中は、秋らしい冷涼な風と美しい紅葉が疲労を癒やしてくれた。苦しい、辛いという思いより、ふしめ坂の向こうに訪れるであろう希望の光に導かれている。
これまで挫折や逃避ばかりで成し遂げたことは何ひとつない。だが、ふしめ坂の存在を知り、人生の転機と巡りあえる気がした。
あの坂をのぼれば、海が見える――物語の少年は、葛藤しながら最後に海を見られたのだろうか。ふしめ坂もあの坂と同じだ。今度こそ途中で諦めなければ、これからの人生の坂道をきっと乗り越えていける。
青春
公開:19/11/10 06:32
節目 あの坂をのぼれば、海が見える 国語 教科書 奥日光 いろは坂 箱根 七曲がり 坂道

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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