スクランブル・ラブ

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スクランブル交差点を渡り、スタバに入りかけたところで肩を叩かれた。
「ご一緒してもいいですか?」
振り向けばほぼ泣き顔の少年が立っている。飲めないくせにと思ったが、私はコクンと頷いた。
「僕、主とはぐれちゃって……。だってこの交差点、人多すぎですもん」
人間なら、LINEしな、と言うところだが。
「主たちは自由にずんずん歩くけど、憑いていくの、大変。背後霊同士が絡まっちゃいますよね」「私も最初はそうだったわ。渋谷初めて?」「ハイ、主が女子大に入学することになり、田舎から出てきて。彼女の行く先など見当もつかない」「この際、別れたら?」「そんな! 死んでも離さない!」「死んでるくせに」「あ!」「何よ?」「彼女だ!」
少年が指差した女性は大学生風の男とTSUTAYAから出てきて、センター街の方へ消えていった。今度は私が肩を叩いて言った。
「新しい出会いなんて無限にあるわよ、この街なら……。」
ファンタジー
公開:19/11/10 00:58
更新:19/11/17 13:44
渋谷

kan0j0( 東京 )

おとぎ話を一粒、どうぞ。百字物語から長編までファンタジーを中心に執筆。ブログでは他に、怖くない怖い話や育児エッセイなど、多重人格に文と絵を書き(描き)分けています。仕事ではコピーライター10年。2019年、フリーに。まずはZINEをつくりたいと思っています。共にコラボできる方など高め合える人ができたら嬉しいです。
kan0j0.livedoor.blog
Instagram: kan0j0
Twitter: angaikikuko
 

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