渋谷ドレスコード・スクランブルース

「ここ渋谷だよ？　一緒に歩きたくない」
　初彼女と初デートで初渋谷。改札で会うなり彼女は俺の真っ赤なトレーナーを見て帰った。俺、足が震える。
「Excuse me」突然の英語。「looking for EXIT」超イケメン外国人だ。
「いぐじっと、ふぉーうぇあー？」
「shopping! shoes, clothes,」
　なんなんだ。なんだって選りに選って服装でフラれたばかりの俺に聞くんだこいつは。犬にでも聞いとけ！
「あっち」俺がハチ公口を指差すと、イケメンは礼を言って去った。
　俺もハチ公くらい見て帰ろ。駅を出てハチ公を探していると、大きな交差点に出た。さっきのイケメンが、渡ろうとしては人波に阻まれ戻ってくる。向かいには巨大な『109MEN'S』のビル。渡ろうとしては、グルっと流され戻ってくる。
　またイケメンが戻ってくる。信号が変わるたび、イケメンが戻ってくる。――彼女は戻らない。