風呂の蛇

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 こんな夢を見た。
 湯船のカランに、一匹の蛇が「湯」と「水」の蛇口ハンドルへ胴を八の字に巻き付け、蛇口に頭を凭れさせている。そして私がタオルで顔をゴシゴシ拭くのを見て、
「気持ちいいか」と言う。
「気持ちがいい」と答えると、
「変わってくれ」と言う。
 私が「いいぞ」と答えると、蛇は浴槽の縁に胴を伸ばし、私の肩を渡った。するとその胴の中ほどに私の腕が生えている。蛇はその腕でタオルを掴んで顔を拭こうとした。だが腕が長すぎたために、タオルに顔が届かなかった。
 ヘビは腕を私に戻し、再び蛇口ハンドルに巻き付いて顔を私にむける。
 私はタオルで蛇の顔をゴシゴシと拭いてやった。蛇は気持ちよさそうに身をよじり「呼んでもいいか」と言う。私は「いいぞ」と答える。「千匹だぞ」「いいぞ」「明日だぞ」「いいぞ」
 湯を抜くと蛇も流れていった。私は窓から裏庭へ出て、スコップで土を掘って、必死で浴槽を埋めている。
その他
公開:19/11/09 21:48
更新:19/11/10 12:48

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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