アディショナルタイム

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会議を終えて部署に戻ると、新人の小池君が私の部長席に座っていた。大半の社員に見覚えがなく、若い奴ばかりなのが気になる。
小池君は私に気がつくと、競争なんで、と言った。
小池部長お客様ですか、なんて声が聞こえる。小池が部長?まだ一年目だろう。
すると突然足元の床が盛り上がり、私はバランスを崩した。
「若手の突き上げですよ」
「何言ってんだよ」
「監督が代わってフロア全員が部長なんです」
「ばかな」
そのときだ、人事部からロングボールが入ったのは。
小池はいち早く私の背後をとってボールを胸トラップすると、押し寄せるほかの部長たちを華麗にかわしてフロアをドリブルで独走。幹部連中を次々に抜き去って、社長室の窓を強烈なシュートで突き破った。
「誰か止めないか!」
社長室では見知らぬイタリア人がゴールを完璧に守っていた。新社長だろうか。
ボールを手に駆け戻りながら、私に残された時間はわずかだと思った。
公開:19/11/09 17:49
更新:19/11/11 07:19

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