2
6

煙草を1本口にした。火をつけると甘い煙。バニラの味がする。恋人と口付け前にでも吸いたかったもんだがタイミング悪かった。今は仕事の昼休憩だ。屋上で空を見上げて煙を吐く。煙は「好きよ。」と空にメッセージを書いた。なんだあいつ、そんなに俺が恋しいか?笑いながらまた空に向かって肺から煙を吐く。煙は「もう1本いかが?」と甘く囁いた。新しい煙草を取り出し火をつける。煙を肺に送ると鼻から恋人の香水の香りが抜けた。
仕事終わり。
アパートに帰ると彼女はいつも通り寝ていた。スーツのまま彼女の隣に寝転がって煙草に火をつける。一昨日彼女が作った林檎タルトの味がした。
煙を彼女の肺に送った。何も言わないままだった。微動だにせず。

あの日林檎タルトを食べたあと、彼女にプロポーズした。
そこからの記憶がない。
横たわる彼女は美しい。
シーツに血で書かれた俺の名前。
朝からオイル切れのライターをまたカチリと鳴らした。
ホラー
公開:19/11/10 18:17
更新:19/11/10 19:11

夜野 るこ

  夜野 るこ と申します。
(よるの)

皆さんの心に残るようなお話を書くことが目標です。よろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容