逃亡

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渋谷のハチ公は、うんざりしていた。
いつも、待ち合わせ場所に使われて、ハチ公自身に興味を持ってくれている人が皆無な気がしていたからだ。
ボクが居なくなったら、人々は慌てて、ボクを探すだろうか?
それとも、別の場所に待ち合わせ場所を移すだけだろうか?

ハチ公は祈るような気持ちで、渋谷の街から姿を消した。

ハチ公が居なくなってから、連日そのニュースで持ち切りになった。
渋谷のシンボルであるハチ公が居なくなったことで、街の人々は寂しがった。待ち合わせ場所に困る人も出てきた。

警察が渋谷の街全体を探したが、ハチ公は、見つからなかった。


















一ヶ月後、ハチ公は渋谷の街に帰ってきた。
風の噂で、大勢の人々が自分を待っていると知ったから。




ハチ公は台座に胸を張って座り、以前と同じように、渋谷の街を見守っていく決意を新たにした。
ファンタジー
公開:19/11/10 08:56
更新:19/11/10 09:03

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