タコ焼き指南

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らっしゃいっ!
「…6個。醤油で」
へいっ。待っててよ。

毎日やってるとさ、まあ色々あるよね。そういや昔、毎日鉄板で焼かれて嫌んなるって歌が流行っただろ?あんなの贅沢だよ。だってあいつら泳げるんだろ?鯛だもんな。

…おっと返しか、よしきた。くるっ。

何の話だっけ?ああ、鯛焼きの奴らが贅沢ってね。こちとらまんまるのタコ焼き、水に入っても転がるのが精一杯よ。へん、マリモじゃあるまいし。

…ほら、どうだい。いい匂いだろう。たまんないね。

カリッと焼けたタコ焼きに、無愛想な大将が黙ってさっと醤油をぬり、鰹節を手早く散らす。
「…どうも」
これまた無口な客が受け取り、ひょいと1個口に放り込む。
「あふっ!あふふっ!」
はは、顔真っ赤にして口とがらせて。兄さんがタコになってどうすんだい。そういう食べ方はさ、3個めあたりからやるもんだよ。
鉄板に並んだタコ焼きがしゅうしゅうと音を立てて笑った。
その他
公開:19/11/08 19:42

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnoteと公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・note×Panasonic「思い込みが変わったこと」コンテスト 企業賞
・SSマガジン『ベリショーズ』掲載
(Kindle無料配信中)

【近況】
 第31回やまなし文学賞 佳作→ 作品集として書籍化(Amazonにて販売中)
 小布施『本をつくるプロジェクト』優秀賞

【note】
 https://note.com/akishiba_note

【Twitter】
 https://twitter.com/CNecozo

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