PM2:00 山手線

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雨だけは降ってくれるなよ。
窓から覗く曇天に、私は沈んだ気持ちで願う。

今日は、憧れの先輩と買い物の日。
待ち合わせのハチ公前へと向かっている最中だ。

鈍色の空から目を逸らすが、沈んだ気持ちは戻らず、悪い想像ばかりが浮かぶ。
もし、会話が弾まなかったらどうしよう。楽しみだった今日が最悪の日になってしまったらどうしよう。


ガタン、と急に電車が減速し、私は現実に引き戻される。
窓を見ると、眼下には、スクランブル交差点、色鮮やかな看板、正面にはTSUTAYAのビルがどっしりと構えている。

ああ、そうだ。ここは渋谷だ。
こんなに大きく、生き生きした街で、憧れの先輩と買い物をして、
良い日にならない訳がない。

「渋谷、渋谷。」
到着のアナウンスと共に扉が開く。

雨が降ったら、かわいい雨具も一緒に探そうかな。
また1つ増えた楽しみを胸に、少しだけ晴れやかな気持ちで
私はハチ公前へと急ぐ。
青春
公開:19/11/08 17:01

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