義父扉

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科学者だった父が突然亡くなった。

遺品整理のために父の研究室に入ると、そこには大きな扉が置かれてあり、中央のスイッチをONにすると、ぶーんという振動とともに扉が開いた。
「一体なんなの?」
扉をくぐり抜けてみたが、とくに変わった様子はない。
まだ完成していないのかしら? と訝しんでいると、隣の部屋に懐かしい父と自分そっくりの少女の姿が見えた。
「⋯⋯」
どうやらこれはパラレルワールドに行く装置らしい。

何日かが過ぎ、私は大好きな父と再び一緒に暮らすため、異世界の自分を殺す計画を立てた。
自分がよく飲んでいるジュースに即効性の毒薬を入れたので、あとは死体を私の世界に捨ててくればいいだけだ。
だがしかし、普段は絶対ジュースなんて飲まない父なのに、
「なんだか喉が渇いたなぁ」
と言いながらその毒薬入りのジュースを飲み干してしまった。
私はそのとき、父が突然亡くなった理由を理解した──。
SF
公開:19/11/08 14:36
更新:19/11/09 08:39

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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