霊験あらたか

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「あの山にはな、傷によく効く温泉があちこちに湧いておるのじゃよ。もっとも山に入るには相当の度胸が要るがの…」
村の古老の意味ありげな物言いにそそられた僕は、翌朝竹の杖を片手に、件の山に足を踏み入れた。
しばらく登ると小さな湯だまりがあり、大怪我をした猿が湯に浸かっていた。猿は僕を見ると弱々しく笑った。
「大丈夫、いつか治るから」
先に進むと、少し大きな湯だまりに傷ついた犬が入っていた。犬は小さく笑った。
「大丈夫、きっと治るから」
更に登ると、キジがお湯の流れに足をつけていた。
キジはにっこり笑った。
「大丈夫、すぐに治るから」
猿・犬・キジときたら…。期待に胸を膨らませ、僕は更に奥へと分け入った。
またも湯けむりを見つけて足早に近づくと、そこには大勢の鬼が湯に入っていた。鬼たちは僕を見ると、満面の笑みで一斉に立ち上がった。
「大丈夫、もう治ったから」
僕の手から杖が音を立てて滑り落ちた。
その他
公開:19/11/08 11:11

秋田柴子

2019年11月より、SSGの庭師となりました。
現在SSから長編まで幅広く書いております。

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞1回 入選2回
・SSG 空想競技コンテスト 入賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・SSマガジン『ベリショーズ vol.5,6,7,light』掲載(Kindle無料配信中)
https://www.amazon.co.jp/dp/B096821HSW

【近況】
 いろいろ書いてます(笑)

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