離婚志願

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ある日曜日、僕は妻に「離婚してほしい」と告げた。
妻は目を見開いて驚き、頑として承知しなかったが、僕が
「他に好きな人ができたんだ。だから財産はもちろん君の望むままに分ける」
と説得すると、なんとか聞き入れてくれた。

妻と出会ったのは中学の時だ。
いじめられっ子だった僕を、彼女だけが助けてくれた。
その美しさと強さに、心から憧れた。
妻がいなければ、僕はとうに世を儚んでいただろう。

しかしあの頃のような愛情が、もう今の妻に対しては、無い。

話が済むと、妻はいそいそと、毎週日曜に逢引きしている男の元へ出かけて行った。
僕にバレていないと思っているらしい。

好きな人がいると嘘をついてまで財産を与えることにしたのは、酒色に溺れて借金を重ね、正体をなくした今の妻のためじゃない。
あの頃、僕の人生を救ってくれた、気高い少女に報いたかったからだ。

一人きりで目を閉じた。
僕はまだ恋している。
青春
公開:19/11/08 10:49

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