彼の名は

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趣味が悪いと言われた。
あんな奴にいつまで振り回されるの?
止めておきなさいもっといいのが星の数、と。

そんなことは分かっているのだ私だって。
何一つ私にくれない優しい言葉も抱擁も。
それでも彼には私が必要なのだ。
それだけは絶対に確か。

だって私は彼にさざ波を立てられる。
他の誰にも出来ないこと。
あの美しい外見を何一つ損なうことなく、私には彼を内面から揺さぶるだけの力があるの。

最初のころはすれ違うたび忠告してきた仲間たちも今では何も言わなくなった。
そして今日も彼はまるで私が存在していないみたいに振る舞う。
どうして認めてはくれないのだろう。
彼もどうしようもなく私に引かれているということを。
悲しくてやせ細ったりそれでもまた希望に胸を膨らませてみたり。
私の月日は欠けは満ちる。

でもね?
きっと遠くないいつか、彼の方から私の所にやってくる。
だってほら、今も引かれて満潮。
ファンタジー
公開:19/11/09 12:23

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