ドタキャン

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 ミナは待ち合わせ時間より少し早く渋谷駅に着くと、交番脇に立った。目印は、カーキのジャケット。
「えっ、嘘? なんで?」
 プロフ通り、長身な男がハチ公前にいると思ったら、初恋の相手、翔ではないか。
(中学のとき、好きな人に勧められてボルダリングにハマッたって、それって、もしかして……)
 ミナはあわててメールを打った。
『ごめん。急用ができて、いけなくなっちゃった』
 手がブルリと震える。溜息交じりに歩き出した翔に近寄って、努めて明るく声をかけた。
「久しぶりっ」
「あっ、ミナ?」
「そう、大学の帰り。翔くんは?」
「実は今、ドタキャンされたとこ」
「って、彼女に?」
「いいや、違うよ。なあ、昼飯食べようぜ」
 翔と並んで、駅の反対側へ歩いていく。
(出会い系サイトは、もうおしまいっ。これからは等身大でいこっかな)
 新しくできたばかりのカフェに入ると、ビッグな苺パンケーキを頼んだ。
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公開:19/11/09 10:06

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