預言者さま(2)

0
5

夜明け前、私は村から程近い小山に登り、默想の時閒を持つ。若い頃からの習慣だつた。あの當時よく「ラビは神に祈ってをられる」と言はれた。先生といふ意味だ。

石造りの家へ戾り、いなご豆の粗末な朝食を攝る。すると、朝陽が低く射し込む窻から、驢馬の子が鼻先を覗かせるやうに、村の少女たちが頭や顏を竝べて見せる。「お早うございます、スーシェさま」「預言者さま、今日もお話を聞かせて下さいなー」

食卓を片付け、私は彼女らを家の中へ招いた。小さな羊の群れがそぞろ步く姿が腦裡に蘇る…
少女たちが乞ふままに、私は幾つかの譬へ話を聞かせる。家出をした放蕩の息子、强盜の手に落ちて怪我をした旅人など。何れも、私の創作ではない。我が幼き日々に敎へられた傳承だ。

彼此30年にもなる。多くの預言者が然うしてゐたやうに、昔は私も弟子たちを連れて國中を步いた。
私自身が神を尋ね求めてゐた。しかし、遂に見つからなかつたのだ…
ファンタジー
公開:19/11/09 09:07
更新:19/12/11 09:15
キリスト外伝

白ねこのため息( あちらこちらにいます )

2019年9月14日から参加いたしました。
しみじみとした後味や不思議な余韻が残る作品を目指しています。
どうぞ宜しく…。
ちなみに、写真は一部を除き、全て自分で撮影したものです。併せてお楽しみ下さい。

【お気軽に各作品の黄色い★をポチって頂けましたら嬉しいです】
☆ブログも更新中。「カツブロ  白ねこのため息」で検索〜‼︎☆
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
現在、資格取得(英検1級など)の勉強中のため、投稿ペースが落ちていますが、
これからも引き続きご愛顧のほど、何とぞ宜しくお願いいたします。ペコリ。
 

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容