禁断の湯

11
11

昔、ある村に入らずの山と伝わる秘境があった。獣道を奥へ奥へと進めば温泉があるという。その温泉は、摩訶不思議な禁断の湯だった。
若葉は枯れ葉、ヤゴはトンボ、オタマジャクシはカエル、山猫は猫又、子猿は長老猿――温泉の中で瞬く間に変わった。
村の子供たちが親の言いつけを守らず、山に入り込み、温泉の湯に浸かり、老人となった。
村では、神隠しの仕業だと噂された。

それから長い歳月を経て、全国の秘湯をめぐる男がやって来た。
男は、村人の忠告を聞かずに入山したが、二度と戻ることはなかった。
後日、科学捜査研究所が温泉の効能を調査分析した結果、湯煙が老化現象を促すと判明した。
山は「竜宮城山」、そして温泉は「玉手箱の湯」と命名され、現在は国指定の立ち入り禁止区域となっている。
ホラー
公開:19/11/09 06:29
更新:19/11/09 10:38
温泉 ヤゴ トンボ 子供 老人 秘湯 科学捜査研究所 湯煙 竜宮城 玉手箱

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容