てつやのおなか

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渋谷が消えた。
そのニュースが世界中を駆け巡ったと先生から聞いて、僕はニュースの足を想像していた。
「すごいふくらはぎだろうなぁ。ニュースの奴、海は泳いだのかなぁ」
笑っている先生に僕は質問をした。
「驚きをこえた驚きがあったときは何て言うの」
「驚愕かな」と先生は言う。
今日は給食当番で、献立は酢豚。器に分けてクラスメイトに配るのが僕の任務だ。その酢豚の中に渋谷が入っていたから僕は驚愕した。
具をよく混ぜてよ、なんて友達が言うから、僕は渋谷を見失った。酢豚は人気で、僕がみんなに渋谷のことを伝える前に何人かが食べてしまった。
学校からの帰り道、僕は半蔵門線で渋谷に向かったけれど、直通運転でふわっと通過してしまった。山手線で試してみても、渋谷は暗闇の中。
家に帰っても僕は心配で食欲が出なかった。それなのにどんどん満腹になっていくのはなぜだろう。
かぼちゃ味のげっぷ。
僕のおなかが眠らない日。
公開:19/11/07 11:41

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