化けの皮

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11月に入り寒さが厳しい中、隣に座る毛深めな男はTシャツにジーパンと、とてもバーに来るような格好ではなかった。
「昨日の渋谷は俺にとってご馳走だった」
染々と酒を飲みながら彼がそう言った。
俺は、何故かと尋ねた。
彼は答えた。「女が色んな仮装をしているじゃないか。それを見るだけで欲が掻き立てられる。」
俺は、そういえば昨日はハロウィーンだったな と心の中で口にする。
俺は、声を低くして彼に訊いた。「君はその後、女を喰ったのか?」
「いやいや、俺は、男も女も食う主義だ。好き嫌いの無い、良い子だろう?
しかし、昨日は本当にご馳走だったな。来年もまた人間の仮装をして行きたいね。」そう言い残し、彼は店を出た。
しばらくしてから、俺も店を出た。
都会の空気を、目一杯吸い込みながら上を見た。
無数のビルの中心にほんのすこし欠けた月が浮ぶ。
最後の深呼吸を溜め息に変え、俺は血染めのセンター街を後にした。
ホラー
公開:19/11/07 10:17

たこ

アマ

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