巣立ち

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 僕が辿った節目を思い出す。
 小さい頃はイヤイヤ期を拗らせ、十代は思春期を爆発させて両親に反抗した。
 二十歳の頃、成人式の檀上で両親へ宛てた手紙を朗読した。普段無表情な父が、涙をダラダラ流して滑稽だったっけ。その日の夜、父と母と三人で初めてお酒を交わしたのを覚えている。

 左手の感覚が無くなった。強く握りしめられた手は鬱血し、暗青色になっている。だが

「あともう少し。頭さえ出てしまえば、あっという間ですからね」

 悲鳴を上げる妻に比べたら、この程度の鈍痛など些細なことで――あ、頭が出た。

「おめでとうございます。元気な女の子ですよ」

 僕は「頑張ったね」と声を掛けながら、妻の頭を優しく撫でた。僕たちの間に生まれたばかりの娘がいる。2Lペットボトルより少し重いくらいの、小さな命がそこにある。

 その刹那、僕たちは子から親になった。
 今度は僕たちが、この子が辿る節目を見よう。
青春
公開:19/11/07 22:58

竹箒390円

綺麗な文章を書きたいと思ってます。
どうぞ、よしなに。

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