渋谷の或る川

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「『春の小川』っていう童謡は知っているかい」
「あぁ、小学校の音楽の授業でよく歌った記憶がある」
「あの童謡のモデルになった川が代々木界隈にあって『河骨川』というんだよ」
「へぇ、その川は知らないなあ」
「実は、河骨川は宇田川の支流で、宇田川の本流に当たる川が超有名さ。
その川は、関東ローム層の鉄分の多い土を多く含んでいて赤茶色に染まった。その色が川の名前の由来ともされているよ。
江戸時代には、鮎や鰻が獲れ、蛍が棲息するほどの清流だったんだけれど、戦後の高度経済成長期にドロ川に変わり果ててしまってね。一九六四年の東京オリンピック以降、下水道として暗渠になっていったんだ。
ただ、今その川を綺麗にしようという機運が高まっているんだよ。
その川の名前は『渋谷川』。渋谷は誰でも知っている地名だよね」
「二〇二〇年の東京オリンピック以降、渋谷の街で蛍が見られるようになるといいね!」
その他
公開:19/11/07 19:47
更新:19/11/07 20:45
春の小川 宇田川 関東ローム層 江戸時代 高度経済成長期 一九六四年 東京オリンピック 暗渠 二〇二〇年

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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