スピーカー
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川の対岸、正午。『遠き山に日は落ちて』が聞こえる。隣町の役場。防災無線スピーカー。この秋から急に選曲が変わり、まだ慣れない。水の無い白い石原を空風が渡る。
生まれてこの方、昼は鐘とサイレンだった。期限切れの乾パンを齧りながら、心なしか、部屋に射す光まで昏い。――虚構の黄昏は、何処まで白日の意識に影を落とすだろう?――掛詞としては27点。処分保留でテキストに残す。
川の対岸、17時。『とおりゃんせ』を横断歩道のテンポが歌う。せめて昼と逆ならと思う。憂鬱。陰鬱。気鬱?どれも大差ない。――本物の黄昏が午後5時の大気圏で乱反射する――意味不明。ある意味そのまま。採点放棄してウィンドウを閉じる。窓の外を雨が濡らす。上流からの放水が、石原の底に対岸と平行線を引く。
川の対岸、明朝7時。半鐘と警報。ウ――――と尾を引いて目が覚める。
上空は朝焼けの紅蓮。降水確率70%。
文字通りの対岸の火事だ。
生まれてこの方、昼は鐘とサイレンだった。期限切れの乾パンを齧りながら、心なしか、部屋に射す光まで昏い。――虚構の黄昏は、何処まで白日の意識に影を落とすだろう?――掛詞としては27点。処分保留でテキストに残す。
川の対岸、17時。『とおりゃんせ』を横断歩道のテンポが歌う。せめて昼と逆ならと思う。憂鬱。陰鬱。気鬱?どれも大差ない。――本物の黄昏が午後5時の大気圏で乱反射する――意味不明。ある意味そのまま。採点放棄してウィンドウを閉じる。窓の外を雨が濡らす。上流からの放水が、石原の底に対岸と平行線を引く。
川の対岸、明朝7時。半鐘と警報。ウ――――と尾を引いて目が覚める。
上空は朝焼けの紅蓮。降水確率70%。
文字通りの対岸の火事だ。
ホラー
公開:19/11/07 19:11
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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