月のふね

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ここ数日間、夜空に月が昇らなかった。月の消えた夜は街の人たちを不安にした。
星は変わらず空にあったけれど、どこか物足りなかった。
そんなある夜、僕は自室で勉強をしていた。遅い時間。確か、日付は跨いでいたはずだ。
一息つくため机から離れて、伸びをしたとき。
窓の外。カーテンの向こうが眩しく光った。何事かと思ってカーテンを開く。

家の側を流れる川。そこが光の発生源だった。
水面に淡い月光が揺れる。川の上には二日月に三日月、半月でできた船が浮かんでいる。船の上ではウサギたちが歌って、踊って、楽器を鳴らして、ワイワイやっている。
ウサギと目が合う。嬉しそうに跳び跳ねる。

月が消えていたのは、このパレードをするためだったのだろうか。月の船は温かな光をたたえている。
ウサギたちは真っ白い餅をついて空へ放る。それは雲になって浮かぶ。
いつしか僕の意識も白いもやに包まれていった。
ファンタジー
公開:19/11/07 18:59
更新:19/11/14 23:17
スクー パレードする月

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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