渋谷から見える星

「なんか渋谷も変わったな。あのバズーカみたいな望遠も今の流行か？」
「なわけねえだろ。ニュースくらい見ろ」

ビルの入口を見張る相棒が苛立ちつつ教えてくれた。渋谷からしか見えない星が発見されたという。その星を目当てに、世界中の研究者が渋谷に集まってきている。おかげで俺たちが目立たないってのは、予想外にラッキーだが。

「標的はアイドルとか？」
「ローカルね。とりあえずは渋谷でしか会えないらしい」

催し物ステージを見通せるビルの屋上で、俺はライフルのスコープを覗き込む。リハーサルをしているあの少女は、いつか世界中から見てもらえることが夢なのだろう。星と真逆か。

「あっ警察だ！やり過ごせ」

俺は落ち着き払って、レンズを空に向ける。でも十字線の真ん中から、少女の真剣な眼差しは消えてくれない。夢…たしか俺たちにも。

「おい、屋上のぼってこいよ。こっからの星、やっぱもう一度お前と見てえな」