引っ張る領収書

「これ今月分ね、頼むよ！」

ファイルに入れられた領収証を置いて逃げるように。
だから今月分とかじゃなくて毎日出せ！と喉まで出かかった言葉を飲み込む。
あれは上司。
例え領収書をきちんと管理出来ない男でも。

「はい。」

彼なりのルールに則って摩訶不思議に分類された領収書達。
その余計な手間を増やすところも地味にイラつく。
だから得意先と飲食したら相手の名前を書け相手の！
車に放置するな印字が消えるだろうが！
っていうか飲み屋に払う金があるなら社員の給料を上げろ！
徐々に扱いに怒りが混じり出す。

『わ、私は４人だったのよ！』
『隣に座った女を含めてでしょ？』
『私は手土産だし！』
『お酒買ったのと香典と一緒にしないで！』

自分の正当性をアピールしようと足を引っ張り合う領収書達。

「・・足が出てるから引っ張られるんじゃない？」

トボトボと却下の箱へ。
こういう時は便利よね。
足。