節目屋

8
9

娘から貰ったシャコバサボテンにいつものように水を遣る。やっと蕾を付け始めた。今日はやけに外が騒がしい。なぜなら近所にある100年つづく老舗『節目屋』がとうとう店をたたむらしく、閉店セールとやらをやっているからだ。俺も冷やかしに行ってみることにした。
節目屋では人気の「結婚」「転職」を筆頭に「離婚」「就職」「転勤」など、様々な節目を客が買い漁っていた。といってもこの買い物は博打のようなもので、結果がわからない。人生がどう転ぶか分からないのだ。店頭ではおまけのように「死」だけが無料配布されていた。誰も受け取らないが。死だけは平等なものだと考えたのだろう。何となく浅はかな気もした。そもそも節目を売る、その倫理観が俺にはどうにも理解できなかった。
何も買わずに家に帰った。すると、何故かシャコバサボテンが真っ赤な花を満開に咲かせていた。
花言葉は【一時の美】
俺の一瞬の人生もそうありたいものだ。
ファンタジー
公開:19/11/06 22:48
更新:19/11/07 04:39

夜野 るこ

  夜野 るこ と申します。
(よるの)

皆さんの心に残るようなお話を書くことが目標です。よろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容