献体

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身体がぐらぐらと揺らされ、ああついに別れだと悟る。
まだ息のある内部神経が、細い痛みと水の冷たさを訴える。電解水のシャワーが通り過ぎた後、微かに血の味がする。足元を器具に固定され、10度ばかり前傾した姿勢で、残して行く子供を思った。
大人になるまで過ごせないと解っていた。乳飲み子のうちから共にあった子供も、今年で12になる。他にも仲間はいたが、齢と共に列を去り、私が最後だった。私達は役目を全うした。それはある種誇りであり、けれどもやはり淋しかった。悲しくはない、ただ淋しかった。

亡骸を手術台に横たえるまでの数秒、私は麻酔を打たれた子供の、やや緊張した息を聞いた。打ち棄てられるものと覚悟したが、血まみれた私の身体は洗浄され、髄と細胞を採取された。
将来の為のスペア。再会の日は来ない方が良いと思いながら、片方に期待を抱きながら、白いエナメルと象牙を脱いだ私は、保存液のプールをゆるりと泳いだ。
その他
公開:19/11/06 22:32
乳歯 歯髄細胞と再生医療

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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