渋谷虫

　渋谷虫は絶滅危惧種である。
　その名の通り渋谷だけに生息する虫で、姿はカブトムシに似て、背中の羽根は黄金でできている。
　そのため黄金目的のハンターから乱獲され、いまではその姿を見ることがなくなった。
　ハンターは大量の渋谷虫を捕獲して街中の会社や店や人々に売り財を成した。しかし渋谷虫が捕れなくなってからはハンターの数も減っていき、今では一人だけになっていた。
　最後に残ったハンターは虫御殿と呼ばれる家に大量の渋谷虫の羽根を隠し持っていた。
　ある日いつものように渋谷虫の羽根を眺めていると、急に羽根が二枚一組になり羽根の裏から体が生えてきた。
　羽根をもぎ取られた渋谷虫が再生したのである。
　渋谷のあらゆる場所から、これまでもぎ取られ売られた渋谷虫が一斉に再生し、現れた。
　何億匹という渋谷虫が渋谷の空一面を埋めた。
　空は黄金の羽根で埋め尽くされ、人々はため息をつきながら空を見あげた。