タイプ:おばけ

我輩はおばけである。生まれてすぐに「おばけだ！」と言われたのが由縁である。おばけには眠る家がない。途方に暮れる我輩を、ゆみちゃんは二眼レフの中に招いてくれた。蓋がパコリと開き、ゆみちゃんが顔を出した。
「東京に行くよ」
ほう、東の都。大変に興味深い。我輩は二眼レフに揺られながら、ゆみちゃんと一緒に飛行機なるものに乗り込む。東京はハロウィーンなるおばけ集会のある魔都である。気を引き締めて、我輩は反転世界でマッスルポーズを決める。
「ついたよ。来たがってた渋谷」
ついに渋谷上陸である。張り切って蓋から飛び出し、マッスルポーズ。そこは、摩訶不思議な異世界であった。
「ハロウィーンはもう終わったよ」
なんと、祭りでなくてもこの光景、なんと不可思議な空気の世界。反転世界に映り込んだ渋谷には、たくさんの先輩おばけが溢れている。スクランブル交差点の真ん中で、集合写真。現像写真にはハチ公も写り込んでいる。