やさしぶや

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クラブで肩を抱かれてから、ひと時も離れず道玄坂を歩く
行き先はホテルだとわかっている
毛深い男はタイプじゃない
でも今日は抱かれてもよかった
誰でもよかった
男に振られ、寂しかった
彷徨う私を渋谷は優しく包んでくれた

目覚めると朝4時
あと1時間で始発が走り、他の街と繋がると魔法が解ける
彼は煙草を吹かしながら私を見た
終わったあとも抱きしめてくれるいい男だった
頬には涙が乾いた跡があった
泣いていたのか?
昨夜、彼はクラブで誰かを探しているようだった
彼にも彼の事情があるのだろう
若さゆえの感情的な行動
満たされない私たちに、渋谷は居場所を与え、肯定してくれる

駅の方から始発の音が聞こえた
シャワーから出ると男の姿はなかった
やっぱり遊びだったんだ

朝の渋谷は静かだ
カラスの鳴く声が私を我に返させる
「強くなりたい」
ハチ公を見てそう願った
その頬には、何故か乾いた涙の跡があった
ファンタジー
公開:19/11/07 07:43
更新:19/11/07 08:47

西木( Tokyo/Tokushima )

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