晴れ後、雷

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女心は秋の空。とはよく言ったものだが、天気予報なぞは二十一世紀の科学を以てすれば、造作もないことだ。

本日の天候は快晴。

恙無くデートプランは完遂されようとしていた。そう、つい三分前までは。

「……何か、頼む?」

「珈琲で」

喫茶店に入り、初めて交わした会話がそれだった。どうにも雲行きが怪しい。

「えっと、どうかし」

「ねぇ、今日は何の日?」

質問を質問で、それも食い気味に返される。なんの日か、思い当たる節がない。誕生日ではないし、一番近い記念日も、それは一ヶ月先の。

「今日がね、結婚して一周年の記念日よ」

猫に小判、豚に真珠。如何に百発百中の予報とて、一ヶ月もズレたカレンダーではその意味を成さない。人の記憶とは、大概にして曖昧なものだ。

味の失せた珈琲を、喉に流し込む。席を立つ私の背は、酷く小さく見えた事だろう。

これ以降の天候については、予報を聞くまでもない。
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公開:19/11/07 01:36

莎 沙翁( 岐阜 )

平均的な高校生。

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