透明人間の唄

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「そこのスーツのお兄さん、聞いていかない?」

昼でもシャッターが閉まったままの商店街。ギターを持った男が声をかけてきた。
人通りもまばらで、無視するのも悪い。しかたなく立ち止まった。

「肩書きなしでは ただの男さ
 俺はまるで 透明人間」

歌詞が心に突き刺さる。

半年前、勤めていた会社が倒産した。
転職なんて楽勝と思っていたが、現実はそんなに甘くなかった。面接に呼ばれるものの、落とされてばかりだ。

思わず、ギターケースに小銭を入れた。

「ありがとうございます」
男は深々と頭を下げる。

ヒゲと長髪で分からなかったが、その顔には見覚えがあった。
テレビ? 雑誌? いや違う。

「社長、お久しぶりです!」
その他
公開:19/11/06 15:17
更新:19/11/06 15:29
スクー 戦力外の芸術

ろっさ( 大阪府 )

短い物書き。
皆さんの「面白かったよ!」が何よりも励みになります。誰かの心に届く作品を書いていきたいです。

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