縮小する思い出

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数年に1回、私の鞄は代替わりする。
取り立てて珍しくない、A4の書類がバインダーごと入る、布製のトートバッグだ。色や柄は時々で違うし、買う店も決めていない。共通点と言えば、本体を縮小した様な、小さいポーチが別に付いている。そのポーチを使う事はないが、付いた物を買ってしまう。
格別大事に扱う方でもない。仕事道具を入れたり、買い物に使ったり、昼の弁当や着替えを突っ込んだりもする。年がら年じゅうそれ一つで過ごす。鞄使いの荒い奴だと、当の鞄も思っているに違いない。
洗濯で落ちない程に汚れ、縫い目が綻び、紐が切れ、底が破れ、修理の余地もない有り様になる頃、例のポーチ付きが目に留まる。なぜかいつも一つ見付ける。二つはない。それを買って荷物を入れ替えながら、わけもなく、鞄が生まれ変わった様な気になる。
古い鞄のポーチは、処分せず取っておく。物が入っていない代わり、そこに思い出が詰まっていると思うからだ。
その他
公開:19/11/05 21:01

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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