あの時の音色

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私には母のお腹の中にいた頃の記憶がある。両親は産まれてくる私によく音楽を聞かせてくれていた。
アコースティックギターを奏でる父。それに合わせて歌う母。それを毎日聞かされていた。聞いたのではない。聞かされていたのだ。
父のギターはミスが多い。母の調子っぱずれな歌声。こんなもので私が喜ぶわけはない。
私は演奏を止めさせるため、母のお腹を蹴った。すると母は「あらあら、喜んでくれているの?」と見当違いのことを言い始める。我慢ならなかった。
私は産まれて間もなくギターを手に取った。玩具には目もくれずギターに向かった。
両親に、本物のギターテクニックというものを見せてやる。
私は言葉が上手く喋れないうちから歌を歌い、短い指でギターの弦を弾いた。
私は音楽の神童と呼ばれ、両親は勿論、親族からも持て囃された。
違う。私はただ、あの時の音色を修正したいだけだ。
その道半ばの今、私は武道館でライブをしている。
公開:19/11/04 18:29

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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