完璧な計画

　私は時計を覗いた。時間通りだ。
　現在、たった今亡くなった夫人のそばに私はいた。
　夫人は眠っているようにベッドに横になっている。
　その傍らの机には、睡眠薬の袋が置いた。
　遺書はあえて用意していない。
　自殺とみられてもいい。事故とみられる方がベストと考えるがどちらでもよかった。
　午後の十一時。この時間私はここにいない人間だ。
　はるか遠く飛行機の中。私は多くの証人に見守れて何も知らずゆったりと過ごしているはずだ。
　さあ、仕上げだ。
　私は念入りにあたりを見渡す。
　もうすぐ莫大な遺産が手に入る。
　気持ちの高ぶりを抑えて最後の確認が終わると、部屋のドアノブに手をかける。
　芸術の完成だ。この完璧な『密室殺人』が……。

　私は気付き凍りついた。
　
　……鍵、家に忘れた。