娘は芸術家

12
11

「今日は私がカレー作るね」
そんなキラキラした瞳で言われたら断れないわよ。

あれは娘がまだ5歳の頃。好奇心垂れ流しの笑顔に負けて人参とピーラーを持たせたのが最初だった。ピーラーを当てた直後、左手から人参が発射されて空を舞った。そして危ない手つきで包丁を持ち、まな板に轟音を響かせて人参をブツ切りにした。
危なくて目が離せなかった。完全な戦力外だったが、好奇心を伸ばすのが親の役目と我慢した。
「アヤが手伝ってくれて助かったよ〜」
「今日のカレー、人参が凄く美味しい!アヤが切ったのか、凄いな〜!」
私と夫に褒められて、娘の上機嫌が限界突破した。
料理に目覚めた娘は子供料理教室に通いだし、戦力外だった腕前はみるみる上達した。

「ごちそうさま」
娘のカレーは美味しかった。
ただ…。
私は「はぁ…」と重い溜息を漏らして立ち上がった。
アバンギャルドでアナーキーに芸術が爆発した台所を片付けるために。
その他
公開:19/11/05 17:41
更新:19/11/05 17:43
スクー 戦力外の芸術

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容