暗渠の赤トンボ
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渋谷駅西口を左に曲がると見える喫煙所。
仕事終わりに一服していると、蜻蛉が煙草の火に止まった。蜻蛉は苦しそうに、それでも必死に火を喰らい、体を赤く灯していく。その様子を俺はじっと見つめた。
「懐かしいね。蜻蛉」
「え」
突然、隣のオヤジが話しかけてきた。
「その蜻蛉、何処から来たか知ってる?」
渋谷川の暗渠の中で暮らしていた蜻蛉が、再開発で開渠になったことをきっかけに飛び立ったらしい。
「ええ」
「ずっと地下にいて、今どんな気分なんだろう」
オヤジが右の人差し指をたてると炎を灯した別の蜻蛉が止まった。すると、
グシャ
乾いた音を立てて、蜻蛉は左手に握り潰された。
「虫は嫌いなんだ。ははは」
オヤジは死骸と掌の焦げ跡を見せつけると、灰皿に捨てて立ち去った。
気づくと煙草の火は消えていて、蜻蛉の姿はなかった。視線を感じ、振り返るとモヤイ像の右の瞳が、か細い炎で燃えていた。
仕事終わりに一服していると、蜻蛉が煙草の火に止まった。蜻蛉は苦しそうに、それでも必死に火を喰らい、体を赤く灯していく。その様子を俺はじっと見つめた。
「懐かしいね。蜻蛉」
「え」
突然、隣のオヤジが話しかけてきた。
「その蜻蛉、何処から来たか知ってる?」
渋谷川の暗渠の中で暮らしていた蜻蛉が、再開発で開渠になったことをきっかけに飛び立ったらしい。
「ええ」
「ずっと地下にいて、今どんな気分なんだろう」
オヤジが右の人差し指をたてると炎を灯した別の蜻蛉が止まった。すると、
グシャ
乾いた音を立てて、蜻蛉は左手に握り潰された。
「虫は嫌いなんだ。ははは」
オヤジは死骸と掌の焦げ跡を見せつけると、灰皿に捨てて立ち去った。
気づくと煙草の火は消えていて、蜻蛉の姿はなかった。視線を感じ、振り返るとモヤイ像の右の瞳が、か細い炎で燃えていた。
その他
公開:19/11/04 23:06
更新:19/11/17 19:17
更新:19/11/17 19:17
渋谷
マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。
100 サクラ
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