旅の目的

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 日々上司から嫌味を言われ、家に帰るときにはぐったりしてしまう。気を失うかのように眠りに就き、目が覚めると慌てて身支度をする。休日は惰眠を貪る。

 友人との旅行──それは非日常への逃避行である。
 寂れた村に辿り着いたときには驚かれたが、こういう雰囲気でのんびりするのもいいじゃないかと諭す。
 山間の旅館──夕食は山の幸。日ごろ碌な食生活を送っていなかったので、その味に顔が綻ぶ。お酒もすすんだのは言うまでもない。
 腹いっぱい食べたら眠くなるのは当然だ。

 友人の微かな寝息が聞こえてきた。
 徐に布団から出る。夜這い──をするわけではない。囁きに誘われて外に出るのだ。
 そこには数人が集まっていた。名前は知らない。しかし、彼らは仲間だった。

「誰を襲撃する?」

 ──そう、私は人狼。
 人間を欺き食す者。その目が鋭く光、血に飢えた獣──今晩友人を襲うことになる。
ホラー
公開:19/11/03 13:15

fnro6( こことtwitter(@fnro6)と他にもいろいろ )

書いたり描いたりすることが好き。
ただし気分屋でムラがあるからいつも書いたりしているとは限らない。

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