消しゴム人間の恋
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僕は消しゴム人間。鉛筆を持つと鉛筆は消える。シャープペンでも同じだ。能力は進化し、時計も消えるようになった。どうも五時を指した時計が誤字だからという理由のようだ。それから僕は物を触らないように生きてきた。「潔癖症」と頑なに言い張って。
しかし僕は恋をしてしまった。会社の一つ下の後輩だ。すぐに彼女との交際を始めたが、一切彼女の体には触れなかった。怖かった。彼女が消えてしまうかもしれないと。
ある日、彼女は真剣な顔をして僕に迫った。
「別れようか」
「何故?」
「私は汚くないよ。あなたに触れたい。抱きしめて欲しい」
僕は動けなかった。
「……愛してるんだ」
「じゃ一回だけ。キスして」
「それだけは」
僕の唇を彼女の唇が塞いだのはほんの一瞬だった。
彼女の名前は平香奈。【ひらかな】とも読める。
「嫌だ」
唇に彼女の感触が残りつつも、僕は何もない空間に言葉を発していた。
しかし僕は恋をしてしまった。会社の一つ下の後輩だ。すぐに彼女との交際を始めたが、一切彼女の体には触れなかった。怖かった。彼女が消えてしまうかもしれないと。
ある日、彼女は真剣な顔をして僕に迫った。
「別れようか」
「何故?」
「私は汚くないよ。あなたに触れたい。抱きしめて欲しい」
僕は動けなかった。
「……愛してるんだ」
「じゃ一回だけ。キスして」
「それだけは」
僕の唇を彼女の唇が塞いだのはほんの一瞬だった。
彼女の名前は平香奈。【ひらかな】とも読める。
「嫌だ」
唇に彼女の感触が残りつつも、僕は何もない空間に言葉を発していた。
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公開:19/11/03 19:50
更新:19/11/03 20:19
更新:19/11/03 20:19
たらはかに
https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。
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