弱竹25 (なよたけトゥエンティーファイブ)

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──竹田先輩が月に行くプロジェクトに選ばれたので会社を辞めるらしい。
すっかり動揺した私は朝から給湯室に駆け込み、珈琲を啜る。
月に行く。先輩は美人で仕事も出来て……凄いなぁ。
それに引き換え私は……社会に出て三年目だし、そろそろ結婚でもするか。などと次々現れる人生のイベントを安易に熟してきただけ……。
「奥菜さん」
「あ、竹田先輩。あの……月に行かれるんですね。おめでとうございます」
「一度諦めたのだけれど、無理だったみたい」
照れくさそうに夢を語る先輩が眩しくてますます自分が情けない。
「この歳で夢へ出戻り。皆に迷惑かけちゃった」
「……」
「奥菜さんは真面目だし、周りに気を遣うし、しっかり者よね。地に足が着いていない私とは大違い」
えー。そんな風に思って下さっていたとは。嬉しくて少し心がほぐれる。
「結婚おめでとう」
白くて美しい先輩の笑顔は月のよう。私にはやはり眩しく輝いて見えた。
青春
公開:19/11/01 21:04
更新:19/11/13 00:42

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
◆Twitter:@ayaka_nyaa5

◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
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【note】400字以上の作品や日常報告など
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