怪しい罪

「あいつ怪しいな」
「あのカップルも怪しいぞ」
二人の警官はパトカーから降りると、容疑者と思われる人間を次々に逮捕して、いきなり刑務所に送り込んでいった。

刑務所の広い地下室には、百人あまりの容疑者たちが収容された。

「なんのつもりだ！何をしたって言うんだ！」
容疑者たちは、看守に食い下がった。
「これは警視総監による命令だ。怪しい人間は全て逮捕しろってな」

食事は水と白米だけだった。ノンカロリーだけに容疑者たちは痩せ細り、看守に暴言を吐く力さえなくなっていった。

看守がワゴンに焼肉を乗せて来た。
「同意書にサインすれば焼肉を与える」
釈放されても訴えや暴動を起こしません。という内容だった。

「釈放だ」
突然の釈放に容疑者たちは戸惑った。
「いったいなんだったんだ？」
容疑者の一人が聞いた。
「オリンピックが終わって、選手が帰国したんだ」
看守は全員の同意書をかかげ、そう言った。