渋谷と骸骨と桃太郎

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凍てつくような冬空の下。出先から店に戻る途中、桃太郎は一匹の犬を駅前で見つけた。

「最近、毎日いるな」

その様子を不憫に思いつつ店に帰ると、一人の骸骨が待っていた。

「あ、お待たせしました」
「いえ、あの、この生地で服を仕立ててもらえませんか」

骸骨は雪輪と呼ばれる雪の結晶を柄にした生地を手に頼んだ。普通、冬に仕立てる柄ではないのだが……

「お願いします」

桃太郎は生地を受け取り、骸骨の寸法を測り始めた。型紙に写し生地を裁って骸骨に合う服を仕立てた。

「素晴らしい」

羽織ると柄の結晶が雪となり、まるでさっきまで外にいたかのように寒々しい。桃太郎は型紙を写したときに付着した消しゴムのカスに気づいた。

「あ、払います」
「いえ結構」

骸骨は肩に積もった雪を愛おしそうに、落ちないようにゆっくり歩いた。そして、余った生地を持ち去ると、こう呟いた。

「これで、あの子と同じだ」
その他
公開:19/11/02 21:22
更新:19/11/02 21:33
渋谷

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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