つまらない者ですが

4
6

「すみません。」
 私は撮影からの帰り道、見知らぬ男に声をかけられた。

「つまらない者ですが。」
 彼はそう自己紹介をした後、私に一言投げかけた。

「声優、Say You.」

 彼はそう言い終わると一礼して、そのまま満足そうに去っていった。
 私がこれと似た光景を見たのは、今日だけで3度目だ。

 原因は分かっている。滑舌の良いアナウンサーの人と共演した時の私のツイート
『つまらない人って憧れる。』
 それ以来、ファンが私に対して寒いギャグを言いに来るのだ。

 だから私は皮肉を込めて、呟き直しておいた。
『教養の詰まった人って素敵。』

「すみません。」
 私はその翌日、また呼び止められた。振り返ると昨日とは別の男が立っている。彼はニタリと笑いながら言った。

「今日、用がある者ですが。」

私は思った。

どいつもこいつも頭の中は空っぽだ。
その他
公開:19/11/02 14:21
更新:19/11/03 14:57

はつみ

現実世界の2次創作
誰かに教えたくなるような物語を書きたいです

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容