○ッキした夜

また私を置いて行ってしまうのね。
わかってる。あなたはいつまでもこんな所でくすぶっている人じゃない。
気にしないで。都合よく使われただけなんて思ってないから。立ち直るきっかけになれたことが私は嬉しいの。
ここで何度もあなたのを受けとめたわね。気持ちよかった。あなたの真っ直ぐな魂を受けとめるのは幸せだった。ズドンと体に響いたわ。それに、左曲がりなあなたも素敵だった。手で掴む度に嬉しさと切なさがこみ上げた。
私はあなたに元気になってほしい。でも元気になったら、あなたは旅立ってしまう。その手伝いをしていることが苦しかった。
また休みたくなったら、ここに…。
いいえ。もう一生、会いにこないで。
あなたには一軍のマウンドがお似合いよ！
二軍捕手の私のことなんて忘れて、あの恋女房に渾身のストレートを投げ込めばいいじゃない！

「お前も一軍に呼ばれてるぞ」
「え、マジで!?」
「俺が頼んだ」
「ぐはっ」