不発少女

2
5

It's too late.
家を出ていく父の言葉で、私の心の導火線に火がついた。
家族を捨てるという。遅すぎることはない。説明したらいい。それが家族だと思う。母が言うには、父はすでに新しい女と新しい生活を隣町ではじめているらしい。こってこての関西人の父がIt's too lateだ。女の影響に違いない。
翌日私は小学校を休み、補助輪付きの自転車で、父が暮らす家へと向かった。途中、私から伸びた導火線を踏まれないように、ちょっとそこ危ないですよ、とか、そこ踏むと火が消えちゃうんでこっち側を歩いてください、とか、後ろばかり気にしていたら、前から来た女の人にぶつかって、その女の人が川に落ちてしまった。
そばにいた男の人が川に飛び込み、女の人を助け、その場で抱きしめると、集まった野次馬が一斉に拍手して、男の行為に歓声があがる。
男は父だった。
誰だ私の導火線を踏んだのは。口の中で増えた火薬が苦い。
公開:19/10/31 10:44

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容